販売力の差を「センス」で片付けていたアパレル店が、営業同行をして分かったこと
「あの人はセンスがあるので売れるんです」。アパレル店の店長や人事の方から、販売力のある従業員とそうでない従業員の差について、こう説明されることがあります。センスという言葉を使った時点で、それ以上は分解されず、具体的に何が違うのかを誰も言葉にできないまま、差はそのまま残り続けます。評価面談でも「もっと頑張って」としか伝えられず、本人も何を変えればいいのか分からない、という状態が繰り返されます。
接客営業研修を実施して、知識としては全員が同じ内容を学んでいるはずなのに、売上の数字には差が残る。この状態を見て「向き不向きの問題」と結論づけてしまう現場は少なくありません。研修の満足度アンケートは高くても、翌月の売上を見ると、結局いつも同じ従業員だけが数字を伸ばしている。この繰り返しを見て、経営層も「教え方の問題ではなく、本人の資質の問題なのかもしれない」と考え始めてしまいます。しかし実際に営業同行でお客様とのやり取りを一つひとつ確かめてみると、差の正体は才能ではなく、接客の「型」が本人の工夫に任されたままになっているかどうかであることがほとんどです。
研修をしても数字に出なかった、同行前の状況
あるアパレル小売業様の例です。接客営業研修は導入していたものの、売上の数字には反映されていませんでした。研修でロールプレイまでは行っていても、現場で実際にお客様へ使えるところまでアウトプットするのが難しく、学んだはずの内容が接客に生かされていない従業員が目立っていました。販売力がある従業員とない従業員との差は大きく、単品売りはできるもののコーディネートでの提案が苦手な従業員もいました。全体に共通していたのは、商品説明になりがちで、お客様のニーズを理解したうえでの接客ができていないという点でした。
店長はこの差を「経験や性格の違い」と捉えており、個人の努力に任せる以外の手立てを持てていませんでした。できる従業員に「どうやって売っているのか」を聞いても、「普通に接客しているだけです」という答えしか返ってこず、本人も自分が何をしているのかを言葉にできていませんでした。感覚としては分かっているが、説明できない。これでは、他の従業員に教えることもできません。研修の内容そのものは的外れではなく、知識としては正しいことを伝えていました。それでも数字に差が出続けたのは、知識を現場でどう使うかという「実践の型」が、研修と現場の間で抜け落ちていたためでした。
営業同行で見えてきた、差の正体
営業同行を通じて見えてきたのは、売れている従業員とそうでない従業員の差が、話し方の上手さや人当たりの良さではなく、お客様への質問の立て方にあるという点でした。売れている従業員は、お客様の普段の服の着方や困りごとを先に確認してから提案に入っていましたが、そうでない従業員は、商品の特徴を説明することから接客を始めていました。
結果として、お客様の側からすると「この商品がどういいのか」は伝わっても、「自分にとってどういいのか」が伝わらず、単品での会話で終わってしまいます。コーディネート提案が苦手な従業員も、提案の仕方を教わっていないわけではなく、どの順番でどう聞けば次の提案につながるかという「型」を持っていないだけでした。質問の数自体はどちらの従業員も同じくらいしていて、違っていたのは質問の「順番」と「目的」でした。これは本人の資質の差ではなく、組織として接客プロセスを言語化し、共有してきたかどうかの差でした。同行して初めて、この違いが現場の誰の目にも見える形になりました。
IDEA VISTAの支援:同行で見えた差を、組織の型にする
この会社様への支援では、営業同行で見えた「売れる従業員の質問の立て方」を、個人の感覚のままにせず、組織として共有できる接客プロセスに言語化するところから始めました。ニーズ確認から提案までの順番を型にし、ロールプレイで実際のお客様役とのやり取りを重ねながら、現場でアウトプットできるところまで伴走しました。
型を伝えるだけで終わらせず、店舗での実践後にあらためて振り返り、使えているかどうかを確認する機会を重ねたことで、学んだ内容が接客として定着していきました。コーディネート提案が苦手だった従業員も、ニーズ確認の質問から会話を始める順番を身につけたことで、無理に商品を勧めなくても、自然に次の提案につながる会話ができるようになっていきました。
結果として、接客プロセスの理解と浸透が進み、店舗売上は前年比1.5倍になりました。コーディネート販売も型として行えるようになり、客単価は30%アップしています。お客様との関係づくりが苦手だった従業員も、お客様がゼロの状態から組織内で1位のお客様数を作れるようになりました。効果的な質問と提案の型が組織に残ったことで、経験の浅い従業員でも成果が出やすい状態に変わりました。
自社の「センスの差」を点検する3つの視点
人事・育成の立場から、販売力の差を点検する際は、次の3つを確かめてみてください。
- 従業員ごとの売上の差を「性格」や「経験」で説明して、それ以上分解せずに終わっていないか
- 商品の特徴を説明することと、お客様のニーズを確認することの違いが、現場の共通理解になっているか
- コーディネート提案などの型が、特定の従業員の感覚やノウハウのままで、組織として共有されていないか
これらは、研修の内容を見直すだけでは気づきにくく、実際の接客の場面を一つひとつ確かめて初めて分かることです。できる従業員本人も、自分が何をしているのかを言葉にできていない場合が多く、聞き取りだけでは差の正体に辿り着けません。本人へのヒアリングとお客様目線からの観察は、見えてくるものが違います。両方を合わせて初めて、差が「センス」ではなく「型の有無」であることが現場の共通認識になります。
まとめ
販売力の差を「センス」で片付けてしまうと、そこで思考が止まり、何を直せばよいかが見えなくなります。差の正体は、多くの場合、才能ではなく接客の「型」が組織として共有されているかどうかにあります。自社の売れる従業員が実際にどう質問し、どう提案しているのかを一度確かめてみるところから、ご一緒できます。
現場の課題は、お話を伺うところから整理できます。
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