相談対応の数字のばらつきを「本人の資質」で片付けていた学校法人で、実際に起きていたこと
「同じ説明をしているのに、担当する職員によって申込みにつながる相談とつながらない相談がある」。人事部長や教育責任者の方から、こうした相談を受けることがあります。説明の中身は同じ、使っている資料も同じ。それでも、ある職員が対応した学生は前向きに申込みへ進み、別の職員が対応すると同じ話をしても検討のまま止まってしまう。この差を見て、現場では「あの人は向いている」「人当たりの問題」という結論で止まってしまうことが少なくありません。
しかし、向き不向きという言葉で説明を終えてしまうと、そこから先は手の打てない問題になります。本人の性格を変えることはできないからです。実際に対応の場面を一つひとつ確かめてみると、差の正体は性格ではなく、相談からクロージングまでの間に、本人の感覚に任されたままの「型の無い部分」があるかどうかであることがほとんどです。
相談対応の数字にばらつきがあった学校法人の状況
ある学校法人様の例です。オープンキャンパスや入学相談の場で、職員ごとに申込みにつながる相談の割合が大きく違っていました。説明する学科の内容や配布資料は統一されており、研修でも一律の対応マニュアルを共有していたため、管理側は「同じことを教えているのに差が出るのは、本人の経験や人柄の問題」と捉えていました。経験の長い職員に「どうやって申込みまで進めているのか」を聞いても、「普通に話を聞いているだけです」という答えしか返ってこず、本人も自分が何をしているのかを言葉にできていませんでした。
もう一つの課題は、在校生から後輩や知人への口コミが広がりにくいことでした。在校生自身が学校の魅力を自分の言葉で語る機会や練習の場が少なく、良い体験をしていても、それが周囲への紹介や継続につながっていませんでした。この二つの課題はどちらも「本人に任せきりになっている部分」という点で、根っこは同じでした。
なぜ対応者によって数字が分かれていたか
相談の場面を具体的に確かめてみると、申込みにつながる職員は、学生の疑問に答えるだけでなく、相談の終盤で「今日話したことで、気になっている点はどこですか」「ご家族には、どう伝えますか」という問いかけを自然に挟んでいました。これは学生自身に決める材料を整理させ、相談を次の一歩につなげるための問いかけですが、申込みにつながりにくい職員は、学生からの質問に答えるところで対応が終わっていました。説明の正確さには差が無く、差があったのは、相談を終わらせる前に学生の背中を押す「もう一歩」があるかどうかでした。
この「もう一歩」は、できる職員の中では意識して行っていることではなく、経験の中で身についた感覚でした。感覚のまま現場に置いておくと、同じように熱心に対応している職員でも、この一歩を知らないだけで数字に差が出てしまいます。在校生の口コミが広がりにくかった背景も同様で、学校の良さを「どう話せばいいか」という型が共有されておらず、在校生自身の言語化の力に委ねられたままになっていました。
さらに見落とされがちだったのが、管理側の評価のしかたです。申込みにつながらない職員を「頑張りが足りない」と評価してしまうと、本人はより一層丁寧に説明することに力を入れてしまい、本来見直すべき「終盤の問いかけ」には気づけません。頑張りの方向がそもそもずれているのに、頑張りの量で評価してしまう。これが、同じ熱量で対応しているはずの職員の間で、差がいつまでも埋まらなかった理由でした。対応件数や説明の丁寧さという目に見えやすい指標だけで現場を見ていると、この「型の有無」というもう一段深い差には辿り着けません。
IDEA VISTAの支援:対応の「型」を組織の共有知に変える
この学校法人様への支援では、まず申込みにつながっている相談とつながっていない相談を具体的に比較し、差が生まれている場面を特定するところから始めました。見えてきた「相談の終盤で学生に考えを整理させる問いかけ」を、個人の感覚に留めず、誰が対応しても使える型として言語化し、オープンキャンパスのクロージングの流れに組み込みました。
同時に、在校生が自分の言葉で学校の魅力を語れるようになるための研修も行い、口コミや紹介が自然に生まれる土台をつくりました。型を伝えるだけでなく、実際の相談を想定したロールプレイで練習を重ね、現場で使えるところまで伴走したことで、職員ごとの対応の差が小さくなっていきました。
評価のしかたについても見直しを行いました。説明の丁寧さや対応件数だけでなく、「終盤の問いかけができているか」を上司が具体的な場面で確認できるようにしたことで、本人の頑張りの方向が揃っていきます。感覚に頼っていた対応が言葉になり、確認できる行動として共有されたことで、経験の浅い職員への指導も「もっと頑張って」ではなく、「次はこの問いかけを入れてみよう」という具体的な一言に変わりました。
結果として、入学者数は前年の3倍となり、在校生のリピート率も2倍に改善しました。できる職員の感覚だったものが組織の型として残ったことで、経験の浅い職員でも学生の背中を押す相談ができるようになっています。
自社の「数字のばらつき」を点検する3つの視点
人事・教育の立場から、担当者ごとの数字のばらつきを点検する際は、次の3つを確かめてみてください。
- 担当者ごとの成果の差を「向き不向き」や「経験年数」で説明して、それ以上分解せずに終わっていないか
- できている担当者に「何をしているか」を聞いて、具体的な行動として答えが返ってくるか。本人が言葉にできない場合、その型はまだ組織の共有知になっていません
- 良い対応ができているのに、それが紹介や口コミ、継続といった次の成果に結びつく仕組みになっているか
これらは、マニュアルや研修の内容を見直すだけでは気づきにくく、実際の対応の場面を一つひとつ比較して初めて分かることです。差を「資質」で片付ける前に、できている人が実際に何をしているのかを確かめる価値があります。
まとめ
担当者ごとの数字のばらつきを「向き不向き」で片付けてしまうと、そこで思考が止まり、組織として手を打てなくなります。差の正体は、多くの場合、本人の資質ではなく、相談やクロージングの「型」が共有されているかどうかにあります。自社のできている担当者が実際にどう対応しているのかを一度確かめてみるところから、ご一緒できます。
現場の課題は、お話を伺うところから整理できます。
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